その水滴が、痛い


帰りのHRが終わる頃には、顔の熱も治っていた。


テスト1週間前の今日は、放課後の部活はなしで、みんなが次々と、教室から出ていく。


バイトがあると急いで教室を出た麻希に手を振って、私も帰ろうと席を立った時。


ん?


隣の席の彼がまだ寝ていることに気付いた。


いつもは、割と早く教室を出ていくのに。
どうしたんだろうか。


「……かっ、」


あまりにも動かず寝ている彼を見ていると、声をかけるのをためらってしまった。


もう少し寝かせてあげよう。


いや違う。


このタイミングを逃したら、私たちは一生、話さない気がする。


本当は、話したいこと、聞きたいことがたくさんあるから。


教室の正面にある時計を見る。


あと、10分経ったら起こそう。


徐々に静かになっていく教室の中、ついに私と角来くんのふたりだけ。


今日数学でもらった課題に取り組んでいると、時間は刻々と過ぎてゆく。


10分後。


……何気に、角来くんと直接話すの初めてで、緊張する。一応、付き合ってるっていうのに。


普通のカップルからみたら、おかしな話なんだろうな。


そんなことを思いながら、ふーと深呼吸して、彼の肩に手を置いた。


思ったよりも角ばった、男の人の肩にドキッとしてしまう。


「……角来くん、起きて」


小さく呟いたつもりだけど、彼の身体はピクッと反応した。そして、机に腕と顔を置いたまま、顔だけをこちらに向けて目を開けた。


……寝起きだっていうのに、そんな綺麗な顔なこと、ありますか。

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