鑑定士マーガレット・エヴァンスは溺愛よりも美味しいごはんを所望する。
9.鑑定士と再会。
「ふわぁぁぁ! うどん! うどんだぁあああーーーー」
貧相な食生活に心が折れかけていたマーガレットのテンションは爆上がり。
マーガレット・エヴァンスは伯爵家出身のお嬢様なのだが、お出汁のいい匂いを前に気品だの理性だのは吹き飛んだ。
若干形が不恰好ではあるもののそれは間違いなく見慣れたうどん。
「はぁぁ、本当はとろろ昆布を入れたり海老天乗せたり、甘ーいおキツネさんを乗せたりしたいんだけど。よし、コレはコレで全然ありよ!!」
トッピングまで用意する余裕はなかったのでただのかけうどんなのだが、この世界に来て一番期待できる食事である事は間違いない。
一番が異世界グルメではなく、自分で作ったというところに若干切なさを感じなくもないが。
「は? なんだコレ? コレにエビをぶち込んだりキツネぶち込んだりすんのか?」
調理方法も自分達の知っているやり方とは違う。
なんというか、地味だった。
粉を混ぜて叩いて踏みつけて。そんなモノを果たして口にしていいのだろうか?
「海老は天ぷらにして乗せるけど、キツネは甘く煮付けたおあげのことで、って、たべないんです?」
伸びますよ? と警戒心剥き出しのロキと笑顔で固まるハインリヒに声をかける。
「俺はいらないと最初から言っている」
ならぐぅーぐぅー主張してるその腹の虫どうにかしろよ、とか。
「私は立場上毒見なしでは食べられないんだ。キミの反応を見てから決めるよ」
笑顔で失礼が過ぎる、とか。
思ったけれども。
「あっそ」
ぶっちゃけ熱々うどんを前に2人に構っている時間がもったいないので、
「とにもかくにも、いっただきまーす」
パチン、と手を合わせたマーガレットは義理は果たしたぜとばかりに2人を放置してうどんを食べ始めた。
「ふおおー黄金色のつゆに絡むコシのあるつややかな白い麺。最っ高ね!!」
フォークでうどんを掬う。
本当は箸で頂きたいところだが、見つけられなかったので今後の課題だ。
「はぁぁ、削りたての鰹節のいい匂い。贅沢に使った昆布最高。さすがグルタミン酸っ!」
美味しいを連呼していると、
『マーガレット:食レポ能力58点』
微妙な鑑定結果が表示される。
「お黙りなさい」
黙ってたら放送事故みたいじゃない! と抗議するマーガレット。
『メタ発言注意報発動。消音モードに設定しました』
「いや、別に消音にしなくてもいいんだけど」
鑑定スキルにツッコミつつもマーガレットは満足気にうどんを食べ続ける。
そんなマーガレットの食べっぷりと出汁のいい香りにロキのお腹は空腹の限界を訴える。
ロキの視線はうどんに釘付け。
「……私も頂こうか」
それを見たハインリヒは少し考えてうどんに手を伸ばす。
「結局食べるんですね。どうぞご自由に」
王子様に出す食べ物じゃないかもしれないが、そんな事は知らない。
ぞんざいに勧められた事に苦笑しながら、ハインリヒはマーガレットを真似てうどんを食す。
「…………!? コレは」
一口食べたハインリヒは衝撃を受けたように固まる。
「なんだ!? やっぱり毒か!?」
捲し立てるロキに、
(失礼な。浄化魔法かけたの大魔導師様じゃん)
と思いつつやっぱりこの世界の住人とは味覚が合わないのかしらとうどんを食べながら無言で見守るマーガレット。
「……これが、オイシイ」
「王子様、なんか感情覚えたてのAIみたいなコメントになってますよ」
何故に片言。そしてあれだけ警戒していたくせに無言でうどんを食べる王子様。どうやらお気に召したらしい。
チラッとロキを見れば、こちら正確にはうどんを凝視しゴクリと喉を鳴らしている。
食欲がないわけではないのに、ずっと食事をとっていなかったのなら無理もない。
(ダメ押ししとくか)
「じゃ、勿体無いので大魔導師様の分は私が」
とマーガレットが二杯目に手を伸ばすより早く、ロキが無言でうどんを食べ始めた。
最初は警戒心を馴染ませながら。
だが、それは初めの一口だけで。その後は無言のまま、すごい勢いでうどんを食べる。
「ロキが、食べた」
驚いたような顔でそう言ったハインリヒにノーコメントであっという間にうどんを平らげたロキは、
「追加で」
とお椀を差し出す。
ふふーんどうよ、と汁まで完食したそのお椀を満足気に見たマーガレットは、
「え? いやもうないけど」
だからおかわりっていってもあげませんって言ったじゃんと苦笑する。
『フラグ回収ヽ(´▽`)/』
ピロンっと効果音付きで画面が表示される。
「ツッコミもこなす鑑定スキルが優秀過ぎる」
物覚えがいいようで、と笑うマーガレットの目には、
『( ,,ÒωÓ,, )ドヤッ!』
といつもの顔文字が映った。
貧相な食生活に心が折れかけていたマーガレットのテンションは爆上がり。
マーガレット・エヴァンスは伯爵家出身のお嬢様なのだが、お出汁のいい匂いを前に気品だの理性だのは吹き飛んだ。
若干形が不恰好ではあるもののそれは間違いなく見慣れたうどん。
「はぁぁ、本当はとろろ昆布を入れたり海老天乗せたり、甘ーいおキツネさんを乗せたりしたいんだけど。よし、コレはコレで全然ありよ!!」
トッピングまで用意する余裕はなかったのでただのかけうどんなのだが、この世界に来て一番期待できる食事である事は間違いない。
一番が異世界グルメではなく、自分で作ったというところに若干切なさを感じなくもないが。
「は? なんだコレ? コレにエビをぶち込んだりキツネぶち込んだりすんのか?」
調理方法も自分達の知っているやり方とは違う。
なんというか、地味だった。
粉を混ぜて叩いて踏みつけて。そんなモノを果たして口にしていいのだろうか?
「海老は天ぷらにして乗せるけど、キツネは甘く煮付けたおあげのことで、って、たべないんです?」
伸びますよ? と警戒心剥き出しのロキと笑顔で固まるハインリヒに声をかける。
「俺はいらないと最初から言っている」
ならぐぅーぐぅー主張してるその腹の虫どうにかしろよ、とか。
「私は立場上毒見なしでは食べられないんだ。キミの反応を見てから決めるよ」
笑顔で失礼が過ぎる、とか。
思ったけれども。
「あっそ」
ぶっちゃけ熱々うどんを前に2人に構っている時間がもったいないので、
「とにもかくにも、いっただきまーす」
パチン、と手を合わせたマーガレットは義理は果たしたぜとばかりに2人を放置してうどんを食べ始めた。
「ふおおー黄金色のつゆに絡むコシのあるつややかな白い麺。最っ高ね!!」
フォークでうどんを掬う。
本当は箸で頂きたいところだが、見つけられなかったので今後の課題だ。
「はぁぁ、削りたての鰹節のいい匂い。贅沢に使った昆布最高。さすがグルタミン酸っ!」
美味しいを連呼していると、
『マーガレット:食レポ能力58点』
微妙な鑑定結果が表示される。
「お黙りなさい」
黙ってたら放送事故みたいじゃない! と抗議するマーガレット。
『メタ発言注意報発動。消音モードに設定しました』
「いや、別に消音にしなくてもいいんだけど」
鑑定スキルにツッコミつつもマーガレットは満足気にうどんを食べ続ける。
そんなマーガレットの食べっぷりと出汁のいい香りにロキのお腹は空腹の限界を訴える。
ロキの視線はうどんに釘付け。
「……私も頂こうか」
それを見たハインリヒは少し考えてうどんに手を伸ばす。
「結局食べるんですね。どうぞご自由に」
王子様に出す食べ物じゃないかもしれないが、そんな事は知らない。
ぞんざいに勧められた事に苦笑しながら、ハインリヒはマーガレットを真似てうどんを食す。
「…………!? コレは」
一口食べたハインリヒは衝撃を受けたように固まる。
「なんだ!? やっぱり毒か!?」
捲し立てるロキに、
(失礼な。浄化魔法かけたの大魔導師様じゃん)
と思いつつやっぱりこの世界の住人とは味覚が合わないのかしらとうどんを食べながら無言で見守るマーガレット。
「……これが、オイシイ」
「王子様、なんか感情覚えたてのAIみたいなコメントになってますよ」
何故に片言。そしてあれだけ警戒していたくせに無言でうどんを食べる王子様。どうやらお気に召したらしい。
チラッとロキを見れば、こちら正確にはうどんを凝視しゴクリと喉を鳴らしている。
食欲がないわけではないのに、ずっと食事をとっていなかったのなら無理もない。
(ダメ押ししとくか)
「じゃ、勿体無いので大魔導師様の分は私が」
とマーガレットが二杯目に手を伸ばすより早く、ロキが無言でうどんを食べ始めた。
最初は警戒心を馴染ませながら。
だが、それは初めの一口だけで。その後は無言のまま、すごい勢いでうどんを食べる。
「ロキが、食べた」
驚いたような顔でそう言ったハインリヒにノーコメントであっという間にうどんを平らげたロキは、
「追加で」
とお椀を差し出す。
ふふーんどうよ、と汁まで完食したそのお椀を満足気に見たマーガレットは、
「え? いやもうないけど」
だからおかわりっていってもあげませんって言ったじゃんと苦笑する。
『フラグ回収ヽ(´▽`)/』
ピロンっと効果音付きで画面が表示される。
「ツッコミもこなす鑑定スキルが優秀過ぎる」
物覚えがいいようで、と笑うマーガレットの目には、
『( ,,ÒωÓ,, )ドヤッ!』
といつもの顔文字が映った。