どちらが先に愛したのか、そんなことはどうでもいい
前編
第3王子スチュアートの執務机には、大きな花瓶が置かれ、いつも大ぶりの花がいけてある。
まるでこの机の上には、重要な書類よりも、こちらがお似合いだと言わんばかりに。
「ふう……」
その日、スチュアートは兄たちから回ってきた煩雑な仕事をさばき、疲れた目頭を押さえた。
王位を継ぐ第1王子や、そのスペアである第2王子と比べて、第3王子の立場は弱い。
こうして都合よくこき使われ、いつかは政治の駒として、どこかへ婿入りさせられるのだろう。
そのときまで粛々と、兄たちの顔色をうかがいながら、過ごすしかないのだ。
「今日あたり、咲くかな」
そんな投げやりな生活のスチュアートだったが、このところ楽しみにしていることがあった。
花瓶にいけられた大ぶりの花たちに隠れるように、ひっそりと綻びはじめた蕾を観察する。
薄いピンク色をしたその花の名前を、スチュアートは知らない。
だが、少しずつ大きくなって、がくの中から花びらが見え、それが幾重にも合わさって成長しているのを、いつしか心の慰めにしていた。
どうしても咲く瞬間が見たくて、スチュアートは寝る前に花瓶を寝室へ移動させる。
そして寝台へ横になっても、月明りを頼りに、蕾のふくらみを眺め続けた。
うとうと微睡み、スチュアートが夢と現世を行き来し始め、今夜はもう無理だろうかと諦めたそのとき、視界の端ではらはらと何かが動いた。
「っ……咲いた!」
硬かった蕾が解け、ピンク色の花びらが次々と顔を出し、大きく開いたその中心に、なぜか膝をかかえて丸くなった小さな人がいた。
波打つ白い髪は背中を覆い、ほっそりとした両腕で、己の体を護るように抱きしめている。
「なんだ、これは……?」
スチュアートの声に反応して、その小さな人は顔を上げる。
瞳の色は花びらと同じ薄ピンク色をしていて、小ぶりな鼻と、ふっくらと柔らかそうな赤い唇が、やけに月明かりの下で煽情的に見えた。
ぱちくりとした瞳がスチュアートを捕えると、小さな人は嬉しそうに微笑んで、美しい声でゆっくり囁いた。
「私は花の精です。どうか私を愛してください」
スチュアートがそっと手を伸ばすと、花の精は恐れもせずに、花からその手のひらの上に移った。
そこで初めて、スチュアートは花の精が全裸であると気がつく。
ゆっくり落とさないように、自分のそばまで引き寄せると、スチュアートはしげしげと花の精を熟視した。
「まるで人形のようだ」
くびれた腰や張り出した胸、何もついていない脚の間から判断して、性は女性なのだろう。
美しい姫君をミニチュアにしたような花の精は、スチュアートに縋るように手を伸ばす。
そして、ただ「愛してください」と繰り返すのだ。
(俺は、眠ってしまったんじゃないのか? そしてこれは、夢の中の出来事では――)
そう思い当たると、それまでいぶかし気だったスチュアートは、途端に大胆になった。
両手で花の精を包み込むと、少し意地悪な声で尋ねる。
「俺は第3王子で、第1王子や第2王子と違い、両親から愛されずに育った。だから愛なんて知らないんだ。だが、女性を悦ばせる方法なら知っている。つまり体だけなら愛してやれる。どうだ?」
それでもいいか、と問うスチュアートに、花の精はこくりと頷いた。
了解を得たスチュアートは、ごくりと生唾を飲み込む。
この異様な夢の内容に、愚かにも興奮しているのだ。
(どうかしている。兄たちにこき使われ過ぎて、疲れているのかもしれないな)
癒しだと思っていた蕾が綻んだら、中からスチュアート好みの小さな女性が現れて、体を好きにしてもいいだなんて。
スチュアートは花の精を自分の枕の上に横たえると、力加減に気をつけながら、指先でそっと花の精の胸に触れた。
胸の先には、ほんのりと色づいた、小さな突起がある。
普通の女性のように乳首が感じるのかどうか、確かめるべく指の腹でゆっくりと擦り始めた。
「あ……」
花の精の可憐な口から、吐息とともに声が漏れる。
それだけでスチュアートの下半身は反応し、むくりと半立ちした。
(女性の体に触れるなんて、久しぶりだ。小さくても美しく、バランスのとれた見事なスタイルだな)
スチュアートの指が往復するのに合わせて、豊かな乳房がふるふると揺れている。
ちょっと押し込んでみると、指先に恐ろしく柔らかい感触が伝わった。
「壊してしまいそうで、ちょっと怖いな」
夢の中とは言え、出来ればこの倒錯した時間を長く味わいたい。
スチュアートは指ではなく、舌を使うことにした。
唾液でぬめれば痛くないだろうし、触覚だけでなく味覚でも、花の精の体を堪能したかった。
「こうして、自分で自分の脚を持てるか? 胸だけじゃなく、秘所も可愛がってやるから」
「これで、いいですか?」
花の精に開脚をさせると、膝を己の手で押さえさせる。
何も知らない様子の無垢な花の精に、淫らな指導をしている自分が卑しくて、スチュアートは肉棒に血が集まるのを感じた。
(俺はとんだ変態だ。こんな背徳感に欲情するなんて。いや、小物な俺らしいのか……)
自嘲しつつ、スチュアートは差し出された花の精の体に、容赦なく舌を這わせていった。
首筋から脇腹、小粒な乳首とたわわな乳房、足の裏から白い尻まで、隈なく舐めた。
小さな唇から漏れる声と息は、濃厚な花のように香り、羽虫となったスチュアートを誘惑する。
スチュアートは舌先をすぼめると、花の精の口にそれを無理やり突っ込んだ。
花の精の顔が苦しそうに歪み、酸欠で頬が赤くなるのをギラギラした目で見つめ、スチュアートはいきり立った男根を下衣から取り出し右手で激しく扱きだす。
スチュアートのそこは、すっかり先走りで濡れ、てらてらと月光を反射する丸い亀頭が、ことのほか淫靡だった。
花の精の甘い唇を味わったあとは、メインディッシュの秘所へ辿り着く。
すでに花の精の意識は飛びがちで、今にも己を失いそうだった。
「気絶するのはまだ早い。これからが本番なのに」
スチュアートの言いつけを守り、がくがくと震えながらも必死に開脚していた花の精は、その言葉にやや怯えを見せた。
それがスチュアートの嗜虐心を刺激してしまう。
たっぷりと唾液をのせた舌を、脚の間に見えるわずかな襞に沿わせ、チロチロと舐め始めた。
上下に何往復もなぞられて、花の精は嬌声をあげる。
「あっあっ、あん……ああぁぁ!」
「達したか? 何度でもいいぞ。もっと声を聞かせろ」
「ひぃ……ん、っく、ぁあ、ああああ!!」
背を反らせて花の精がびくんびくんと痙攣すると、スチュアートも右手の動きを加速させて絶頂を目指した。
こぼれる白濁汁のせいで滑る陽茎をしっかり握り、スチュアートは花の精の下半身をめがけて子種を放つ。
しばらくぶりの射精に、たまっていた精子が勢いよく飛び出してくる。
今や、荒い息を零しているのは、花の精だけではない。
未熟な硬い蕾をほころばせ、花咲かせる行為がこれほど興奮するとは思わなかった。
「兄たちが、処女は格別だと言うのも分かる気がする」
舐め過ぎてふやけた花の精の股座を眺める。
スチュアートの吐き出したものがドロリと垂れる様は、脳がしびれるほど卑猥だった。
「こんなに気持ち良かった自慰は初めてだ」
スチュアートは自分の男性器と花の精の体を枕カバーで拭い、両手の中に花の精を包み込んで寝台に横たわった。
吐精してすっきりしたせいか、心地よい倦怠感とともに急激な眠気に襲われる。
「おかしいな、ここは夢の中だろう? 夢の中なのに……どうして眠くなるんだ?」
そう呟いたスチュアートが完全に寝入ってから、両手の中が光り出す。
そして、そこにいたはずの花の精の姿は、跡形もなく消えたのだった。
まるでこの机の上には、重要な書類よりも、こちらがお似合いだと言わんばかりに。
「ふう……」
その日、スチュアートは兄たちから回ってきた煩雑な仕事をさばき、疲れた目頭を押さえた。
王位を継ぐ第1王子や、そのスペアである第2王子と比べて、第3王子の立場は弱い。
こうして都合よくこき使われ、いつかは政治の駒として、どこかへ婿入りさせられるのだろう。
そのときまで粛々と、兄たちの顔色をうかがいながら、過ごすしかないのだ。
「今日あたり、咲くかな」
そんな投げやりな生活のスチュアートだったが、このところ楽しみにしていることがあった。
花瓶にいけられた大ぶりの花たちに隠れるように、ひっそりと綻びはじめた蕾を観察する。
薄いピンク色をしたその花の名前を、スチュアートは知らない。
だが、少しずつ大きくなって、がくの中から花びらが見え、それが幾重にも合わさって成長しているのを、いつしか心の慰めにしていた。
どうしても咲く瞬間が見たくて、スチュアートは寝る前に花瓶を寝室へ移動させる。
そして寝台へ横になっても、月明りを頼りに、蕾のふくらみを眺め続けた。
うとうと微睡み、スチュアートが夢と現世を行き来し始め、今夜はもう無理だろうかと諦めたそのとき、視界の端ではらはらと何かが動いた。
「っ……咲いた!」
硬かった蕾が解け、ピンク色の花びらが次々と顔を出し、大きく開いたその中心に、なぜか膝をかかえて丸くなった小さな人がいた。
波打つ白い髪は背中を覆い、ほっそりとした両腕で、己の体を護るように抱きしめている。
「なんだ、これは……?」
スチュアートの声に反応して、その小さな人は顔を上げる。
瞳の色は花びらと同じ薄ピンク色をしていて、小ぶりな鼻と、ふっくらと柔らかそうな赤い唇が、やけに月明かりの下で煽情的に見えた。
ぱちくりとした瞳がスチュアートを捕えると、小さな人は嬉しそうに微笑んで、美しい声でゆっくり囁いた。
「私は花の精です。どうか私を愛してください」
スチュアートがそっと手を伸ばすと、花の精は恐れもせずに、花からその手のひらの上に移った。
そこで初めて、スチュアートは花の精が全裸であると気がつく。
ゆっくり落とさないように、自分のそばまで引き寄せると、スチュアートはしげしげと花の精を熟視した。
「まるで人形のようだ」
くびれた腰や張り出した胸、何もついていない脚の間から判断して、性は女性なのだろう。
美しい姫君をミニチュアにしたような花の精は、スチュアートに縋るように手を伸ばす。
そして、ただ「愛してください」と繰り返すのだ。
(俺は、眠ってしまったんじゃないのか? そしてこれは、夢の中の出来事では――)
そう思い当たると、それまでいぶかし気だったスチュアートは、途端に大胆になった。
両手で花の精を包み込むと、少し意地悪な声で尋ねる。
「俺は第3王子で、第1王子や第2王子と違い、両親から愛されずに育った。だから愛なんて知らないんだ。だが、女性を悦ばせる方法なら知っている。つまり体だけなら愛してやれる。どうだ?」
それでもいいか、と問うスチュアートに、花の精はこくりと頷いた。
了解を得たスチュアートは、ごくりと生唾を飲み込む。
この異様な夢の内容に、愚かにも興奮しているのだ。
(どうかしている。兄たちにこき使われ過ぎて、疲れているのかもしれないな)
癒しだと思っていた蕾が綻んだら、中からスチュアート好みの小さな女性が現れて、体を好きにしてもいいだなんて。
スチュアートは花の精を自分の枕の上に横たえると、力加減に気をつけながら、指先でそっと花の精の胸に触れた。
胸の先には、ほんのりと色づいた、小さな突起がある。
普通の女性のように乳首が感じるのかどうか、確かめるべく指の腹でゆっくりと擦り始めた。
「あ……」
花の精の可憐な口から、吐息とともに声が漏れる。
それだけでスチュアートの下半身は反応し、むくりと半立ちした。
(女性の体に触れるなんて、久しぶりだ。小さくても美しく、バランスのとれた見事なスタイルだな)
スチュアートの指が往復するのに合わせて、豊かな乳房がふるふると揺れている。
ちょっと押し込んでみると、指先に恐ろしく柔らかい感触が伝わった。
「壊してしまいそうで、ちょっと怖いな」
夢の中とは言え、出来ればこの倒錯した時間を長く味わいたい。
スチュアートは指ではなく、舌を使うことにした。
唾液でぬめれば痛くないだろうし、触覚だけでなく味覚でも、花の精の体を堪能したかった。
「こうして、自分で自分の脚を持てるか? 胸だけじゃなく、秘所も可愛がってやるから」
「これで、いいですか?」
花の精に開脚をさせると、膝を己の手で押さえさせる。
何も知らない様子の無垢な花の精に、淫らな指導をしている自分が卑しくて、スチュアートは肉棒に血が集まるのを感じた。
(俺はとんだ変態だ。こんな背徳感に欲情するなんて。いや、小物な俺らしいのか……)
自嘲しつつ、スチュアートは差し出された花の精の体に、容赦なく舌を這わせていった。
首筋から脇腹、小粒な乳首とたわわな乳房、足の裏から白い尻まで、隈なく舐めた。
小さな唇から漏れる声と息は、濃厚な花のように香り、羽虫となったスチュアートを誘惑する。
スチュアートは舌先をすぼめると、花の精の口にそれを無理やり突っ込んだ。
花の精の顔が苦しそうに歪み、酸欠で頬が赤くなるのをギラギラした目で見つめ、スチュアートはいきり立った男根を下衣から取り出し右手で激しく扱きだす。
スチュアートのそこは、すっかり先走りで濡れ、てらてらと月光を反射する丸い亀頭が、ことのほか淫靡だった。
花の精の甘い唇を味わったあとは、メインディッシュの秘所へ辿り着く。
すでに花の精の意識は飛びがちで、今にも己を失いそうだった。
「気絶するのはまだ早い。これからが本番なのに」
スチュアートの言いつけを守り、がくがくと震えながらも必死に開脚していた花の精は、その言葉にやや怯えを見せた。
それがスチュアートの嗜虐心を刺激してしまう。
たっぷりと唾液をのせた舌を、脚の間に見えるわずかな襞に沿わせ、チロチロと舐め始めた。
上下に何往復もなぞられて、花の精は嬌声をあげる。
「あっあっ、あん……ああぁぁ!」
「達したか? 何度でもいいぞ。もっと声を聞かせろ」
「ひぃ……ん、っく、ぁあ、ああああ!!」
背を反らせて花の精がびくんびくんと痙攣すると、スチュアートも右手の動きを加速させて絶頂を目指した。
こぼれる白濁汁のせいで滑る陽茎をしっかり握り、スチュアートは花の精の下半身をめがけて子種を放つ。
しばらくぶりの射精に、たまっていた精子が勢いよく飛び出してくる。
今や、荒い息を零しているのは、花の精だけではない。
未熟な硬い蕾をほころばせ、花咲かせる行為がこれほど興奮するとは思わなかった。
「兄たちが、処女は格別だと言うのも分かる気がする」
舐め過ぎてふやけた花の精の股座を眺める。
スチュアートの吐き出したものがドロリと垂れる様は、脳がしびれるほど卑猥だった。
「こんなに気持ち良かった自慰は初めてだ」
スチュアートは自分の男性器と花の精の体を枕カバーで拭い、両手の中に花の精を包み込んで寝台に横たわった。
吐精してすっきりしたせいか、心地よい倦怠感とともに急激な眠気に襲われる。
「おかしいな、ここは夢の中だろう? 夢の中なのに……どうして眠くなるんだ?」
そう呟いたスチュアートが完全に寝入ってから、両手の中が光り出す。
そして、そこにいたはずの花の精の姿は、跡形もなく消えたのだった。
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