唯都くんは『運命の番』を溺愛したい

 「親が決めた相手で……まだ会ったことはなくて……40歳くらいの人で……」


 「好きでもない男と、結婚させられそうになってるの?」


 「私の家……借金まみれだから……」




 言葉を詰まらせた唯都様の顔が、どうしても見れない。

 私が床を見つめている間に、重ぐるしい沈黙がよどんでいく。




 神楽家の娘として産まれた宿命。

 アルファではなく、ベータの血を宿してしまった罰。



 私ひとりがどうあがいても、両親の決定は覆せない。

 17年間家族に虐げられてきたから、嫌というほどわかっている。




 自分の感情を抑え込むことは慣れっこだ。

 悲しみをごまかす術も身につけてきた。



 ただ……



 心の奥に、幸せになりたいと願う自分がいるんだ。

 どうしても思ってしまうんだ。



 結婚は、大好きだって思える人としたかったなって。





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