唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
私の耳に吹きかけられた、ダークヒーロー並みに痺れるワイルドボイス。
慌てて手を耳に押し当て、広い玄関の奥に両親を誘導している唯都様の背中を目で追いかける。
隅でコソコソと何を話しているんだろう。
唯都様は背中しか見えないけれど、私の両親は嬉しそうに微笑んでいる。
お母さんなんて馴れ馴れしく唯都様の袖をつかんでは、少女みたいにはしゃいでいて……って。
あれ?
お父さんもお母さんも表情筋が固まっちゃった。
顔面蒼白。
何かにおびえているかのように体を震わせ出しちゃったけど、いきなりどうしちゃったの?
「ということで、よろしくお願いしますね。琉乃ちゃんのお父さん、お母さん」
お父さんたちの前に立つ唯都様は、二人の肩をポン。
すっきりとした表情で私のところに戻ってきた。