唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
唯一無二の、身勝手アイドルの魅力にとりつかれ……
『アイドルだって人間だもん。他人の声なんか気にせず、好き勝手活動すればいいよ』
『エンラダはある意味、世界一やさしいアイドル様だよね』
『CDもDVDもグッズも売らない。ファンクラブもない。ライブは無料だし、テレビやネットでいつでもお金かけずにパフォーマンスが見れちゃうんだから』
彼らを好意的に受け入れている国民が、数多くいらっしゃるんだ。
実は私・神楽琉乃もその一人なんです。
親の言いなりになっている自分。
身勝手アイドルの彼ら。
何もかもが、自分と正反対に見えるんだろうな。
エンラダの曲を口づさみながら、日々膨大な量の家事をこなし……
彼らが羨ましい。
私もエンラダみたいに、自分が思うままに生きてみたい。
でも現実は無理。
親になんか逆らえない。
涙を製造してしまいそうになる苦い感情を、彼らの歌で必死にごまかしているんだ。