唯都くんは『運命の番』を溺愛したい


 唯一無二の、身勝手アイドルの魅力にとりつかれ……



『アイドルだって人間だもん。他人の声なんか気にせず、好き勝手活動すればいいよ』


『エンラダはある意味、世界一やさしいアイドル様だよね』


『CDもDVDもグッズも売らない。ファンクラブもない。ライブは無料だし、テレビやネットでいつでもお金かけずにパフォーマンスが見れちゃうんだから』



 彼らを好意的に受け入れている国民が、数多くいらっしゃるんだ。



 実は私・神楽(かぐら)琉乃(るの)もその一人なんです。



 親の言いなりになっている自分。

 身勝手アイドルの彼ら。

 何もかもが、自分と正反対に見えるんだろうな。



 エンラダの曲を口づさみながら、日々膨大な量の家事をこなし……



 彼らが羨ましい。

 私もエンラダみたいに、自分が思うままに生きてみたい。

 でも現実は無理。

 親になんか逆らえない。


 
 涙を製造してしまいそうになる苦い感情を、彼らの歌で必死にごまかしているんだ。
< 11 / 369 >

この作品をシェア

pagetop