唯都くんは『運命の番』を溺愛したい

 歌もダンスも刀を振り回す殺陣(たて)も、琉乃ちゃんの瞳にカッコよく映りたい一心で鍛錬した。

 今日はステージの上でスポットライトを浴びる俺を、琉乃ちゃんに堪能してもらおう。

 いま以上に、大好きになってもらえたらいいな。

 スタートからアンコールまで気を抜かず、完璧なパフォーマンスをしなければ。



 ソファに腰を掛けたまま決意を固める俺の指は、スマホ画面を四方八方に高速移動。

 スマホ初心者の琉乃ちゃんはまだ、文字入力に慣れていないんだろう。

 ゆっくりではあるものの即レスしてくれるのがわかるから、こっちも誠心誠意お返したい。

 俺はスマホの画面に、早業のごとく文字を羅列させる。



 ただ琉乃ちゃんからのメッセージが天禰(あまね)のことばかりというのが、ちょっと……


 『あまねさんがどんな性格だったか詳しく教えてください』

 『好きな食べ物は? 兄弟っていますか?』

 
 俺のことをもっと知ってよと、思ってしまわなくもないけれど……

 気にしないでおくよ。

 ネットという見えない糸でつながっているこの時間でさえ、愛おしくてたまらないから。

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