唯都くんは『運命の番』を溺愛したい

 うつむく私の瞳に、光沢のあるスニーカーが映りこんだ。



 「フフフ、天上(あまがみ)唯都のことが大好きってアピールをしてくれているの?」



 耳なじみのある艶声に肩がビクン。



 「まだ光らせてくれているなんて嬉しいな、俺色のペンライト」



 目の前で揺れる鮮やかな赤いサイリウムにハッとして、電源を切らなきゃとボタンを長押ししようとするも不可能で。

 私の目の前に片膝をつく唯都様に、ペンライトを握る手の平ごと包まれちゃった。



 会場にはまだ、まばらにファンの子たちが残っている。

 キャーキャー騒ぎ出していないということは、唯都様の変装が完璧という証。



 ……そう思い込めば、少しはスリルが軽減される気がする。

 アイドル様本人が客席にいるなんて、誰にもバレませんように。



 唯都様は、騎士風のステージ映えする衣装はまとっていない。

 綺麗めなシャツスタイルでもない。



 細身のダメージジーンズに、黒いТシャツとキャップ。

 フレームが大きい黒縁めがねという、ラフでちょっと悪っぽいファッション。

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