唯都くんは『運命の番』を溺愛したい


 「あなたは神楽家のお抱え運転手じゃないんですか?」


 『この女ってばさ、人を疑うってことを知らないのかね? ご両親から送り迎えを頼まれたって言ったらまんまと信じ込んで、遠いコンサートホールまで大変ですが送り迎えをよろしくお願いしますって深々と俺に頭を下げたんだよ。いくら知らないとはいえ俺に売られる身だよ。律儀すぎて笑いを堪えるの苦労したよ』



 売られる?

 今そう聞こえた気がするが……

 そんなはずは……



 『トップアイドルくんは知らないか、キラキラした世界にいるから』


 「なんのことだ」


 『特殊体質のオメガって高値で売れるの。大金をはたいてでも手に入れたい金持ちアルファが世界中にたくさんいてさ』


 「琉乃ちゃんが……特殊体質……」


 『飼育型オメガ。聞いたことない?』



  ……まさか



 『この国で見つかったの、この子入れてたった数人らしいよ。海外にはもっといるみたいだけど、売られたあとに自分は飼育型オメガって知る子も多いらしくて、世界第二の性機構も全員の人数は把握しきれていないんじゃないかな。って、そんなことどうでもいっか』


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