唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
『この女を助けたかったら、電話を切った後にスマホに送る場所に一人で来い』
「これは犯罪だ。今すぐ警察に……」
『取引だと俺が言ったろ? 今すぐにでもこの女を船に乗せられるんだ。海外の売人に引き渡せば、二度とこの女の顔は拝めないだろうな』
うっ、分が悪すぎる。
俺は言葉を飲み込んだ。
琉乃ちゃんは人質として捉えられている。
離れた場所にいる俺はいま、彼女を守ってげることはできない。
悔しいが要求をのむしかない。
「わかった、今から向かう」
『好きな女のために自分の人生を捨てる気になったか』
「彼女には何もするな」
『愛が深いね。世界中の民にキャーキャー騒がれている大人気アイドル様は違うな』
「琉乃ちゃんを傷つけないと約束をしてくれ」
『わかったわかった。この女には何もしない。俺にとってはお前を釣るためのエサでしかないしな』
「約束だ」
『その代わり一人で来い』
「ああ」
『誰にもバレずにだ。タクシーの運転手にも変なことを吹き込むんじゃねーぞ』