唯都くんは『運命の番』を溺愛したい

 『この女を助けたかったら、電話を切った後にスマホに送る場所に一人で来い』


 「これは犯罪だ。今すぐ警察に……」


 『取引だと俺が言ったろ? 今すぐにでもこの女を船に乗せられるんだ。海外の売人に引き渡せば、二度とこの女の顔は拝めないだろうな』



 うっ、分が悪すぎる。

 俺は言葉を飲み込んだ。



 琉乃ちゃんは人質として捉えられている。

 離れた場所にいる俺はいま、彼女を守ってげることはできない。

 悔しいが要求をのむしかない。



 「わかった、今から向かう」


 『好きな女のために自分の人生を捨てる気になったか』


 「彼女には何もするな」


 『愛が深いね。世界中の民にキャーキャー騒がれている大人気アイドル様は違うな』


 「琉乃ちゃんを傷つけないと約束をしてくれ」


 『わかったわかった。この女には何もしない。俺にとってはお前を釣るためのエサでしかないしな』


 「約束だ」


 『その代わり一人で来い』


 「ああ」


 『誰にもバレずにだ。タクシーの運転手にも変なことを吹き込むんじゃねーぞ』



< 229 / 369 >

この作品をシェア

pagetop