唯都くんは『運命の番』を溺愛したい

 通話を切ってスマホをポケットに押し込み、あたりを見回す。

 離れたところにある天禰(あまね)のお墓。

 尊厳(そんげん)独璃(ひとり)がマネージャーと一お供え物を広げている。



 手桶置き場の大柄な人影は我流だ。

 柱に背中をあずけスマホを睨みつけている。



 琉乃ちゃんを守るためなら何でもする。

 俺が売られることになっても構わない。
 


 これは自分のためなんだ。

 愛する人が売られてしまったら、俺は絶望に飲みこまれ生きていけないだろう。



 助けられなかったことを悔やんで

 無力な自分を責めて

 二度と会えない琉乃ちゃんが痛めつけられていないか

 泣きじゃくっていないか

 最悪なシナリオを想像し、涙する毎日を送ることになる。



 そんな日々は耐えられない。

 耐えられずはずもない。

 琉乃ちゃんが不幸になるくらいなら、俺が地獄に落ちたほうがましなんだ。


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