唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
「野獣だの猛獣だの言われてる俺だってな、童話の王子になりきって奇跡を信じたくなる時くらいあるって言ったんだよ」
「……」
「俺様のカッコよさ、見くびんなバーカ!」
俺の額に激痛が走る。
全力でデコピンをされたと理解できたのは、額にめりこませた指で我流が鼻の下をこすったあとのこと。
じりじりうずく痛みが、早く琉乃ちゃんを助けに行けと訴えている。
「行かなきゃ! その前に尊厳たちにも……」
「唯都、いいから行け!」
「でも……」
行け!と再度怒鳴られた。
それなのに俺は前にすすめない。
手首ががっしりと掴まれている。
我流のゴツゴツした大きな手に。
「どうした、我流?」
視線が絡むのを避けたいのか、俺に背中を向けて。