唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
重黒い愛
  
 ☆琉乃side☆



 重いまぶたを開ける。

 ここは……どこ?

 キーンとうずく側頭部。

 こめかみに手を当て鋭い痛みを逃がしたくても、体に幾重にも巻きつく太い縄のせい。

 腕の自由が全くきかない。



 コンサートからの帰り、神楽家のお抱え運転手さんの車で家まで送ってもらっていた。

 双子の姉の理亜ちゃんは高校に行くときにお世話になっているみたいだけど、私にとっては初めましての人。

 短髪に白髪が混ざっているから、40歳なかばぐらいかな。

 ずっとニコニコしているから、心の綺麗な人なんだろうと心を許してしまいましたが……



 コンサート会場を出発して数分後、事件が起きた。

 

 「ちょっと車を止めます」


 そう言われ快く頷いた直後、男性は後部座席のドアを開け座っている私の真横に。


 「ククク、お人好しの商品でほんとありがたい」


 薬品の匂いがするハンカチを、私の鼻と口に押し当ててきた。

 
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