唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
抵抗する暇もクルマから逃げ出すチャンスもないまま、遠のいていった意識。
やっとまぶたを開けることができた私の瞳には今、勝ち誇った美顔が映しだされている。
「おはよう琉乃、売られる覚悟はできてる?」
状況がつかめない。
恐怖で心臓が凍りそうになる。
目の前に立っているのは、双子の姉の理亜ちゃんだ。
波打つ潤ツヤ髪を肩の後ろに流しながら、嬉しくてたまらないと言わんばかりのニヤつき顔で私を見つめてくるから、冷や汗が止まらない。
私が今いるこの場所は、結婚式場で挙式をするチャペルだと思う。
理亜ちゃんのバックには、一段高くて広い祭壇があり。
すみには黒いピアノが佇んでいる。
祭壇の向こうは一面ガラス張り。
黄金に輝く満月が、漆黒の海を照らしている。