唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
捕まっちゃいました
―― 数十分前 ――
「早く帰らなきゃ」
夕焼け色に染まる歩道。
制服のスカートをひらめかせながら、私はバタバタと走らずにはいられない。
時間までに屋敷に滑り込まないと、またお母さんに怒られちゃう。
『琉乃、チンタラ帰ってくるんじゃないわよ!』
『やらなきゃいけないことが、山ほどあるでしょうが!』
なんて怒鳴る母に頬をぶたれたるのは、日常茶飯事で。
放課後のチャイムが鳴ったと同時、私はクラス1早く教室を飛び出している。
「こら神楽、廊下を走るんじゃない」と眉をしかめる先生の小言は、いつもスルーでごめんなさい。
母にキレられる方がよっぽど怖くて。
校内も帰り道も、全速力で猛ダッシュ。
家に着いたらメイド服にチェンジ。
神楽家の使用人になりきって、寝るまで働かなきゃいけないんだ。
理解しているつもりだよ。
神楽家はエリートアルファしか存在を許されない、高貴な家柄だってこと。
それなのに私は、小1の第二の性検査で『ベータ』判定をされてしまった。