唯都くんは『運命の番』を溺愛したい


 「僕その時ね、ほんと壊れてたんだ。あとほんの少しの勇気があったら、僕は今ここにいない。勇気があるあっちゃんと違ったから……僕が弱虫だったから……」



 過去の苦しみを吐き出す独璃くんに、かける言葉が見つからない。



 「唯くんたちもすっごく悲しんだ。僕みたいに大泣き大暴れなんて無様な姿は見せなかったけど、めいっぱい苦しんで今も苦しんでて。もう会えないという地獄を僕たちは嫌というほど味わった、だから絶対に唯くんは人を殺めない」


 

 「残された人の悲しみが、わかるからですか?」



 私の問いに独璃くんは顔を上げた。

 瞳には涙がたまっている。

 「そうだよ」と重みのある頷きの後、清い雫が透明感のある頬を伝っていく。



 「あの男は罪を犯した。オメガの君を誘拐して海外に売り飛ばそうとした。君に恐怖を与えた罪人をこの世から消し去りたい。唯くんはそう思っているかもしれない」



 それなら今すぐに、唯都様を止めないと……

< 310 / 369 >

この作品をシェア

pagetop