唯都くんは『運命の番』を溺愛したい


 ガッガッと焦ったような音が耳に飛び込んできて、私は意識を今この瞬間に戻した。

 

 ……この足音は。



 ハッとした。

 視線を上げた。

 開いている車のドアから外を見た。




 瞳に映ったのは、こっちに走ってくる唯都(ゆいと)様。

 彼の瞳には今、私しか映っていないんじゃないかな?

 そう勘違いしてしまうくらい、必死な顔で駆けてくる。



 「僕……消されないよね……嫉妬で……」



 真横から聞こえてきた、乙女チックな震え声に「ん?」

 隣に座る独璃(ひとり)くんは、何におびえているんだろう?

 一瞬だけ疑問が湧いたけれど、彼に構ってはいられない。



 視線を唯都様から、そらせなくて。

 ううん、私がそらしたくなくて。

 ずっとずっと、唯都様だけを瞳に映していたくてたまらない。


 
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