唯都くんは『運命の番』を溺愛したい


 含みきれなくて、口から水がこぼれちゃうんですけど……



 「尊厳、琉乃ちゃんに何を飲ませたの!」



 慌てた唯都様が、私の顔を唯都様の胸元に逃がしてくれた。



 「オメガの発情を抑える薬です。二人きりになれる場所に行く前に病院に行きなさい。いくら血が止まったとはいえ、額が切れているんですから」


 尊厳くんは重い軽蔑のため息で、長めの愚痴を締めくくっている。



 それを聞いた唯都様は顔面蒼白。

 30秒ほどマネキンのように固まり。

 今度は突然、アタフタのオロオロオロ。



 「琉乃ちゃんのオメガフェロモンにあてられていて、二人きりになることしか考えられなかった。ごめんね、今も傷口が痛むよね。今すぐ病院に行こう。独璃お願い、病院まで俺たちを連れて行って」



 唯都様は独璃くんの返事を聞かぬまま、お姫様抱っこで私を車まで運び、救急病院に連れていってくれたのでした。




























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