唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
とっ、とりあえず返さなきゃ。
このチョーカーを今すぐに。
だって私はベータなんだから。
真実を伝えて
『唯都様の本当の番を見つけてください』
と、笑顔でチョーカーをお返ししよう。
覚悟はできた。
つかの間の幸せを手放す覚悟が。
チョーカーを外そうと、首すじに指を押し込んでみる。
縛ってあるリボンを見つけ、ほどこうとしたちょうどその時
「有名人の恋人になりたいからって、オメガのふりをしてはダメでしょ?」
聞き覚えがありすぎるツヤ声が、私の頭上に降ってきた。
うつむいたまま、何度も何度も駆け上がってくる恐怖。
体中が震え出してしまい、チョーカーを外すという簡単な行為さえ私はできないでいる。
状況だけでも確認しなきゃ。
私は怯えながら目玉だけを斜め上にずらしてみた。