心に刻まれし、君への想い
でも礼司がいないところで聞いてはいけないだろう。
「個人練習は2人が仲直りするきっかけになるかな?」
「……どうかな」
歯切れが悪く、困ったように笑う。
「俺が意気地なしだから、礼司が怒ってるんだ。俺が変わらないと、彼は許してくれないと思う」
「高野くんが意気地なし?ちょっと、意外」
「……」
高野くんの新しい一面に遭遇できた。彼にも勇気が出ない時があるんだね。
「でも私と一緒だね。私も臆病で、なかなか勇気が出ないんだ。それに私から見たら高野くんはとっても勇気ある人だと思うよ。入学式の答辞、立派に読んでたよね。臆病な人は、みんなの前であんなに堂々と話せないよ」
私だったら100%辞退するし、初対面の相手に自分から話しかけられることは勇気がある証だと思う。
「…君にそう言われると、少しだけ自分を肯定できるよ」
高野くんの表情が少し和らいだ。