心に刻まれし、君への想い

私のように運動が苦手な子は下を向いていた。そうだよね…こういう時、目を合わせたくない気持ちは私にもよく分かる。

「特に!走るのが遅い奴は、参加しろよ!俺がアドバイスするよ!」

追い討ちをかける言葉。平田くんが好意で言ってくれていることは分かるけれど、プレッシャーになるんだよね…。


「さっき、強制参加じゃないって言ったよ?」

そう声を発してくれたのは高野くんだった。
場の雰囲気と平田くんのやる気を損なわない柔らかい言い方だ。


「いや、もちろん!強制じゃないよ!」

慌てて平田くんも頷く。


「誰だって苦手なことはあるし、体育の時間以外に練習をしたい奴だけ参加でいいでしょ。本番は走ることが好きな者が、苦手な子をフォローすればいいんじゃない?クラス全員で戦うってそういうことでしょ?」


その言葉に今まで下を向いていた子も顔を上げて高野くんを見つめていた。心の中でありがとうって言ってる気がする。少なくとも私は高野くんの配慮(はいりょ)に感謝した。

「確かになー、悪い悪い。つい熱くなっちまった」

「いや、平田のやる気には助けられてるよ?」

高野くんの声がけに平田くんは嬉しそうに白い歯を見せて笑った。

彼の説得力のある発言と、周囲を気遣う優しさでクラスの空気が和やかになっていた。
< 105 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop