心に刻まれし、君への想い
しかし高野くんは私を避けているようで、なかなか2人きりになるチャンスがなかった。
思えば高野くんの隣りにはいつも誰かがいて、それでも彼は上手くタイミングを見計らって私に話しかけてくれたのだ。
彼が話しかけてくれなければ、私は話しかける隙すら見つけることができなかった。
「雪菜?今日の全体練習はどうする?」
掠れた声で多絵が聞いて来た。咳は止まったようだが、まだ喋ることは辛そうだ。
「えっと、…」
高野くんの方を見るが他のクラスの女子と話していて、こちらに背中を向けていた。
今日はさすがに個人練習はないか…。
迷っている内に長谷川先生が教室に入って来て、帰りの会が始まる。
「私は雪菜に合わせるよ」
「ありがとう」
そう多絵が背後から囁いてくれた。