心に刻まれし、君への想い
「えー、みんなにひとつ伝えることがある。平田のことだ」
長谷川先生が教壇の前に立つ。
そういえば今日、学校を休んでいるようだった。
「平田は今朝、登校中に交通事故に遭った。幸いにも命には別状はないが、右足を骨折したそうだ。よって、スポーツ大会には出られない」
交通事故に驚き、命に別状はないと知り安心して、スポーツ大会に出られないと聞いてショックを受ける。感情がジェットコースター並に揺さぶられた。
教室がザワザワと、みんながそれぞれ驚きと落胆の声を上げる。
そっと高野くんを見ると、既に話を聞いていたようで俯いて唇を噛み締めている。
「平田はスポーツ大会の実行委員をやってくれていた。今日から本番までの間、平田の代わりに実行委員をやってくれる者はいないか?ちなみに去年、実行委員をやっている生徒…礼司と、高野、大村、おまえたちは、2年続けて委員にはなれないルールだ」
見知った名前が挙げられる。
珍しく起きていた礼司が盛大な舌打ちをした。ルールがなかったらきっと平田くんの代わりに委員を引き受けていただろう。たぶんそれは高野くんも同じだと思う。