心に刻まれし、君への想い
自分を奮い立たせて心を落ち着かせる。
私の後ろに並ぶ高野くんは何も言わずに肩を叩いてくれた。
今は上手く会話できる自信がないから、頷き返す。
バーン、と大きく雷管の音が響き、
トップバッターの多絵がスタートした。
いよいよ始まるーー。
多絵、頑張って!
彼女は風を背中に受けて颯爽とコースを駆け抜ける。
一定のリズムを刻み、どんどん進んでいく。
見ていて安心できる走りだ。
他のレーンを走る女子に圧倒的な差をつけて、最後まで足を緩めなかった彼女は一番最初に仲間へバトンを繋いだ。
多絵からバトンを受け取ったバスケ部の男子は背が高い分、一歩が大きくてすぐに一周を回り切る。順調に1位のまま、バトンが繋がれていく。
私の、前までは順調だった。
「赤木!」
いよいよ。私の番だ。
サッカー部の小島くんがバトンを持った腕を伸ばしてくる。
「小島くん!」
バシッと手のひらにバトンが収まる。
何回も小島くんと練習したもんね。
スタートダッシュを意識して、全力で足を動かす。
アンカーの高野くんまで100メートル!私にとっては長い距離だけど、諦めちゃダメだ。