心に刻まれし、君への想い
夢中で走り抜け、高野くんへとバトンを託した。
バトンを渡す一瞬、笑ってくれた。
背筋が伸びた綺麗なフォームで軽やかに走り抜けていく。徐々にスピードアップしていき、瞬く間に前の人の背中に追いついた。
彼の走りから目が離せない。
これまで聞こえなかった黄色い声援も上がる。
高野くん、凄いな…。
1年生のスポーツ大会は、こんな必死に頑張れなかった。できるだけ自分の方にボールが飛んでこないことだけを祈って、早く試合が終わればいいと思ってやり過ごしていた。
それって一生懸命に勝とうとしている人に失礼だったよね。苦手な私は苦手なりに精一杯、頑張ればよかったんだな…。
高野くんは1人抜き、もう1人の背中を追いかける。
現在2位。
残り30メートル程だ。
高野くんなら、絶対に抜かしてくれる。
そう信じて、必死に応援した。
「高野くん!頑張って!」
苦手な大声も、自然と口から飛び出した。