心に刻まれし、君への想い
先ほど戻ったばかりの記憶の内容を説明する。
2人は最後で口を挟まず黙って聞いてくれたが、頭の整理が追いつかないようで話し終えた後もリアクションがなかった。
それとも信じられないだろうか。
こんな夢みたいな話をーー。
甘酸っぱいみかんジュースを飲みながら2人の言葉を待つ。
振り返れば、いくつかのピースがはまる。
2年A組の教室で初めて陽太と言葉を交わした時、彼は「大丈夫」って聞いてくれた。あれは石段から落ちた怪我の具合を確かめるための質問だったはずだ。
最初から、陽太は私のことを"雪菜"と呼び捨てで驚いた記憶もある。
好物のみかんジュースを何も言わずに買ってくれたこともあった。
ガンバレって応援メッセージのある単語帳。
時折見る、大雨の夢。
どこで買ったのか思い出せないピンク色のシュシュ。
それら全てがヒントだったのにーー残念ながら思い出すことはできなかった。
「………そっか、俺の病気は雪菜のおばあさんが治してくれたんだね」
長い沈黙の後、陽太は穏やかな表情でそう言ってくれた。