心に刻まれし、君への想い
「なに?」
「頭下げて」
「ん」
これまで何度も同じやり取りをしているため、礼司は大人しく頭を下げた。座ったままでは手が届かずに腰を浮かして髪に触れる。
礼司の髪は柔らかく、きちんとドライヤーを乾かして眠れば寝癖はつかないはずだ。
私より髪が綺麗なのに勿体無いな。
「昨日はお母さん、平気だった?」
クシで髪を梳かすと、少しだけマシになる。
ヘアスプレーがあれば完璧だけど、残念ながら持ち合わせていない。
「激怒してたぜ。今朝は叩き起こされた」
「だろうね」
「今日から1週間、夕飯の買い出しを頼まれちまったよ。寄り道するなってさ」
礼司は大きなため息をついた。