心に刻まれし、君への想い
商店街の入り口付近にある肉屋で、コロッケとメンチを買う。高野くんが奢ってくれようとしたけれど断った。勉強を教えてもらうんだし、私の方が奢るべきだけど、金欠なので次の機会にしてもらった。
礼司がドーナツを食べすぎるから!
「うわ、美味しい!」
「揚げたてだ。最高っ」
近くのベンチに座って、メンチを頬張る。肉汁が口の中に染みて、旨味が広がった。
「雪菜は此処、よく来るの?」
「うん。夕飯のおかずに買うこともあるよ。高野くんは?」
「平田たちとたまに寄るかな。学生は安くしてもらえるし、いいよね」
小さな紙袋に入ったメンチに齧りつき、決してお上品な食べ方ではないけれど、高野くんは器用に食べている。衣を服に落とした私とは大違いで、そっと手で払った。
「コロッケも食べる?」
「え?」
本当はコロッケも食べたかったけれど、夕飯のことを考えてメンチだけ買った私を気遣って、高野くんはコロッケを差し出した。