心に刻まれし、君への想い
「わ、私は大丈夫だよ!」
まだ口をつけていないコロッケを先に食べるわけにいかないよ。
「一口なら、お腹もいっぱいにならないでしょ」
「でも悪いって!」
「どうぞ」
高野くんはそう言ってメンチを持っていない私の左手に袋を当てた。
嬉しいけど!
私が口つけたコロッケを高野くんが食べるわけでしょ?それって、間接キスだよね?
昨日、礼司が慌ててドーナツショップから出て行ってしまい、お皿に残されたチョコドーナツは躊躇いなく食べたけど…その状況と、今は違うし!
「ほら、どうぞ」
私にコロッケを持たせることを諦めた高野くんは、それを口元に押し付けてきた。
唇に触れるザラザラな感触と、鼻に届く食欲を誘う香り。
私は大人しくコロッケを齧った。