心に刻まれし、君への想い

午前中の授業終了と、お昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴る。

「行こうか!」

「うん」

コンビニの袋を提げた多絵が元気よく声をかけてくれたおかげで、少しだけ気持ちが楽になる。

なんとなく礼司を見ればお弁当をかけこんでいるところだ。昼休みにサッカーでもやるのだろう。


いつもひとりで上る階段を多絵と並んで進む。


「体育の授業、見学だったよね?大丈夫?」

「あ、そうなの。春休みに足を捻挫(ねんざ)して、しばらく見学にさせてもらってるんだ」

「えー、痛くない?」

「もう、痛みはないよ」

「良かったぁ」

「うん、ありがとう」


会話が途切れそうになり、次の話題を必死に探す。怪我の話だから、続けて多絵のことも聞けばいい?いやいや、思い出したくないこともあるかもだし、嫌な気分にさせちゃうよね…。


「来月のスポーツ大会だし、早く治るといいよね。今年は何の種目だろう?」

そう多絵が話を続けてくれたことにホッとした。
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