心に刻まれし、君への想い

礼司は私の前を歩くことが多いな。

何気なくクラスメートから投げかけられた言葉に傷ついた放課後も、テストの結果が悪くて落ち込んだ日も、いつも礼司は傍にいてくれた。

隣りに寄り添うのではなく、一歩前に立って、弱気な私を先導してくれる。


「ほら、先行けよ」

それなのに神社の鳥居に着いた途端、私の背後に回った。

「え?」

「いいから、上れ」

ああ、そうか。
もし私が階段を踏み外してしまった時に備えて、後ろにいてくれるんだ。お母さんが子供を安全な道の内側に誘導することと一緒だ。

「はーい」

階段に足をかける。

ありがとう、そうお礼を言われることは不本意だろうから気付かないフリをした。
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