心に刻まれし、君への想い
今から胃がキリキリしてきたが、逃げるものかとおにぎりを頬張る。口内に程よい塩味が広がる。
「高野くんも、元陸上部だもんね」
「え?」
持っていたおにぎりが手から滑り落ちそうになる。
「2年生になる前に辞めちゃったみたいだけど、速かったよ。色々な大会にも出場していたみたいだし」
「知らなかった…」
高野くんは部活をやっていないから放課後は暇だと言っていた。だからずっと帰宅部だと思い込んでいたんだ。
「放課後、校庭で高野くんに熱い声援を送る女子がたくさんいたけど、見かけなかった?」
「うーん、覚えてないや…」
「そっか。きゃーきゃーうるさかったよ〜」
私も見てみたかった。
綺麗なフォームで颯爽と走る彼が鮮明に想像できてしまう。
「なんで辞めたの?」
飽きたから辞めた、そんなタイプには見えない。