心に刻まれし、君への想い
多絵の目から見ても、高野くんはプラスのイメージしかないのかな。私も同じだ。
授業を真剣に聞いているし、言葉遣いも丁寧だし、誰とでも仲良さそうで、先生からも信頼されている。まだ新学期が始まって2週間しか経っていないけれど、隣りの席の高野くんのことには関心をもってきたつもりだ。
穴がなく、高野くんはいつも完璧だ。
「決めた!」
左の手のひらに右の拳を当てた多絵は名案が閃いたようだ。
「え?なに?」
「高野くんにリレーを教えてもらおうよ!」
いやいや、全然名案じゃなかった!
「探るにはやっぱり、親しくならないとでしょ!雪菜がリレー、苦手って言ったら教えてくれるよ!」
「言えないよ!迷惑だし!無理、無理!」
リレーから陸上部のことを連想させてたくないし、それに本当に下手だから安易に教えてだなんて言えない。恥ずかしすぎる!
「言ってみなよ!」
「嫌だよ」
「…高野くんのこと、知りたいんじゃないの?」
「それは…」
隣りの席だから1日に数言だけ言葉を交わすけど、たくさんは話さない。図書室で2回勉強を教えてもらったが、あれ以来、放課後の接点もなかった。
校門で礼司を待っていた時、なにを言いかけていたのかも未だに聞けてはいない…。