心に刻まれし、君への想い

それならスッキリすると思ったけれど、「違う」と礼司は答えた。


「じゃぁ誰だろう…?心当たりない?」

「ないけど」

礼司は2人掛けのソファーの背もたれに寄りかかって、天井を仰いだ。

そうだよね、2年生になってから誰にも辞書を貸していない。1年生の頃から描かれていて、気が付かなかったのかも。


「まぁ、いっか。宿題やろっ」

考えても答えは出ないし、悪意はなさそうだから気にしなくてもいいのかな。

「んー、写させて」

「はぁ?自分で解きなよ!」

最初からやる気のない礼司の足をテーブル越しに()る。

「痛っ」

蹴った衝撃(しょうげき)で姿勢を正した礼司は(ひざ)をさする。
そんなに強く蹴ってないし、大袈裟(おおげさ)な!

「絶対に見せないからね!」

「暴力反対!」

プリントが礼司の視界に入らないよう教科書を立てる。

本当に同じ高校を目指す気があるのだろうか?人のことを言える立場でないことは分かっているけど、いつまでも変わらない礼司の態度にもやもやする。
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