心に刻まれし、君への想い

新しい環境にでもすぐに馴染(なじ)んでいる礼司の姿は容易に想像できた。反対に狼狽(うろた)えている私も想像できる。

もっと情報を集めないとね。多絵の進路予定も聞いてみないと。



「ーー俺に、しとけば?」


ん?


礼司が唐突(とうとつ)にそう言った。

珍しく真顔で言うものだから、返答に()まる。

なに?
なんの話?


「高野に教えてもらわなくても、俺だって教えられる。雪菜だって俺が足、速いこと知ってるだろ?」

あ、リレーのことだ。


「なんでわざわざ高野に聞くんだよ?」

「それは…」

もちろん礼司の足の速さは知っている。小学生の頃からリレーの選手に選ばれていたし、途中でリタイアするようなキャラに見えて、実は長距離走も得意だ。
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