ただ、この夜から抜け出したくて。
「ありがとうございます。デート、楽しんで」
「あ、あざす…」
小走りでベンチに戻ると、ちひろちゃんが落としていた頭を上げて、僕を見る。
「いちごと抹茶、どっちが良い?」
「篤見、さんはどっちが好きですか」
「ちひろちゃんの、好きなクレープじゃない方を食べる」
「答えになってないし…。じゃあ、抹茶で」
僕の返しに、少し口角を上げて抹茶を受け取ってくれた。
笑ってくれただけでも、大きな進歩。
生クリームの上に、沢山乗せられたいちごにかぶりつくと、続いてちひろちゃんも抹茶クリームにかぶりつく。