ただ、この夜から抜け出したくて。
「…私で良いんでしょうか。私の話は何の役にも立たないけど」
「役に立つとかは、別の話なんですよ。2人が話せるきっかけにしたいんです。これでちひろさんの気持ちが聞けたら、母親失格だなんて思わなくなります」
「母親失格…。篤見さん、初めて会った時の会話を覚えてたのね。分かりました。じゃあ付き添いに行くわね」
「ありがとうございます…僕も一緒に行きますから」
こうして、多少の根回しをして、ちひろちゃんはお母さんに病院に行く話をして、お母さんも同行することに賛成してくれた。
「篤見さん!お母さん来てくれるって!」
電話口で嬉しそうに話す声を聞いて、頬が綻んだ。