ただ、この夜から抜け出したくて。
腕を振って肩をぶんぶん回しながら、気合を入れるお母さん。
思わず、お母さんに抱きついた。
こんなに暖かい場所だったかな。
胸がじんわりと暖かくて、規則正しく聞こえてくる心臓の音が、さらに心地よさを増す。
私もこんなに暖かいお母さんになれるだろうか。
「大丈夫よ、ちひろは強いから。でもたまには、弱いところを見せるのも必要だからね。篤見さんに甘えてるみたいに」
「え、私篤見さんに甘えてる?」
「誰が見ても甘えてる。相思相愛は、見てて癒されるわよ。微笑ましい」