ただ、この夜から抜け出したくて。
「早速色々聞くけど、自分の今の状況は分かるよな?」
「…誘拐、わいせつ、監禁」
「何で悪人になろうと思ったんだ?」
「悪人じゃない。僕を必要としていたんです。相手を探しているのが見えて、僕も求めていたから」
全く理由になっていない。お互い求めていたからとでも言いたいのか。
俯いていても分かる不敵な笑みに、吐き気がする。
「逮捕される前、もう1人誘拐した子がいたけど、理由は?」
「うーん…息抜き」
僕はこの言葉を聞いた途端、同じ空間にいることに耐えられなくなって、部屋を飛び出した。
本当は、取り調べが終わるまで部屋を出てはいけない決まりになっている。
そんな決まりはどうでも良い。とにかく呼吸がしたかった。