ただ、この夜から抜け出したくて。
「すみません、お待たせしました」
「あ、篤見さん。ちょうど今、篤見さんのこと話してたんですよ」
「お母さん!それ言わなくて良いから」
「僕のこと?何の話ですか?気になる」
「言わない!お母さんとの秘密です。ほら、帰ろう」
今日は刑事になって初めて、最高に充実した1日になった。
これ以上幸せなことはないかもしれない。
でも、まだちひろちゃんに気持ちを伝えていないのが、心のモヤモヤを増やしていく。
自分が担当した事件の被害者だから。
ずっと関わってきたから、思いが強いだけと勘違いしてるのかもしれない。
そう考えたら、1歩が踏み出せない。
勇気が出ないというより、自分の気持ちが分からないのかもしれない。