ただ、この夜から抜け出したくて。
まだ僕に怯えているかもしれないし、急に人が入れ替わるとちひろちゃんも怖いだろう。
「ちひろちゃん…。さっきの刑事さんだよ。部屋に入らせてね」
顔だけを覗かせると、ベッドで丸くなって布団を肩までしっかり被って、僕たちに背中を向けている。
ちひろちゃんが保護されている病室は、監禁されていた時の何の彩りもない殺風景な部屋とは真逆の、ぬいぐるみがたくさん置いてある鮮やかな部屋。
花は全く置いていなくて、多分花瓶を割って自傷をしないように、未然に防いでいるんだと思う。
太陽の光は常に部屋に差し込んでいて、あの監禁部屋とは違って、暖かい。