ただ、この夜から抜け出したくて。
こんなスムーズに終わるわけがない。
強姦事件は、どんなことでも何かに躓く。
「篤見さん、帰らないんですか?早く戻らないと昼休憩終わっちゃいますよ」
「うーん…もうちょっとここにいようかな」
ズボンのポケットからスマホを出して、画面を1回タップする。12時半か…。
確かに、もう戻らないと。
班長に訳を言ってまだここに残るか、ちひろちゃんを1人にして帰るか…。
そう悩んでいる、たった数分。たったの数分間、ちひろちゃんに背を向けていただけ。
悩んだ挙句、甘いにおいのことを言おうと決めて振り返ると、大粒の涙を流しながら、窓にかかっているカーテンを首に巻き付けていた。
「ちひろちゃん!何してるの!」