ただ、この夜から抜け出したくて。
それなのに、どの部屋を探しても見つからないどころか、静かすぎて不気味なほど。
それも怪しいポイントだと、班長は独り言を言っている。
「班長。ここ、怪しくないですか?」
引き寄せられるように入った部屋は、他と同じく誰も居ない。
人も居ないけど物も何もなくて、本棚が部屋の隅にポツンとあるだけ。
普通に見れば、ただの本棚。
でも、本棚のすぐ右の床に何かを引きずった傷跡が薄く残っていた。
これは本棚を頻繁に右側へ引きずっている証拠。
「開けるぞ。隠し扉だろうな」
跡のとおりに右に引きずると、本棚よりひと回り小さな引き戸を見つけた。
この扉を開けて、誰も居ないわけがない。