ただ、この夜から抜け出したくて。
「楽しい話をしたいのであれば、ご家族や友人に話してください。…あ、あなたには話せる人が居ないのか。じゃあ残念ですね。誰にも話せないかもしれない」
1週間の間に、僕や他の刑事たちが周辺地域から聞き集めた情報は、引くほどだった。
いかにもサイコパスのような目つきをしていただとか、挨拶をされたら殺すぞと怒鳴られたとか、地域でも浮いた存在だったらしい。
正直、話す相手が居なくて1人なのも納得できる。
「何だよその言い方…俺だって話す相手くらい居るし」
「花にひっつく幼虫とか、道路に転がる小石に話すんですか?ご近所の方々に聞きましたよ。あなたは誰にも挨拶せず、人ではなく物に話しかけ続けているとか」
「だから何だよ!別に何に話しかけようと俺の勝手だろ!」