ただ、この夜から抜け出したくて。
「久しぶり。元気にしてた?」
「…こんにちは、お久しぶりです。はい、元気です。毎日この窓から空を見てます」
「そっか。綺麗に見えるね」
何気ない挨拶をして、ちひろちゃんのお腹を見てしまいそうになって、視線を窓に移した。
薄い雲が真っ青な空にあちこち浮かんでいる。
こんなに綺麗な空なのに、今はこの空を綺麗だと見上げる余裕がない。
今、ちひろちゃんのお腹には、赤ちゃんがいる。
しかもその赤ちゃんは、好きでもない人に襲われてできた子。
そう考えていたら、ちひろちゃんが可哀想で仕方なかった。