ただ、この夜から抜け出したくて。
普通は、赤ちゃんができたら嬉しいはず。
でも今回は心の底から嬉しいとは思えない。
「刑事さん…泣いてるんですか?どうしたんですか?」
「ごめん。僕、重い花粉症なんだ。涙が止まらなくて」
見え透いた嘘までついて、辛いから逃げる言葉を並べた。
ものすごく辛い。何も知らないちひろちゃんが、今僕の目の前で笑っていることが辛い。
泣く理由なんて答えられるわけもなく、花粉症で何とかごまかしたけど、いつかは僕が泣いていた理由に、ちひろちゃんも気づく時が来る。
その時、僕はちひろちゃんと赤ちゃんを守ってあげられるだろうか。
鼻をかんでくると嘘をついて、病室を出た。