ただ、この夜から抜け出したくて。
「退院してどこに帰るとかは」
「そういうのは、わざわざ聞かないんですよ。自宅じゃないですかね?」
自宅…。自宅の住所は確か、取調べの資料に載っていたはず。
たった今怒られたところなのに、同じように走って警察署に戻った。
妊娠していると伝えられて、どういう気持ちだったか。
信頼してくれていた僕にも知らされず、主治医から突然聞かされた時、相手が誰かはすぐに分かったはず。
その時の恐怖は、簡単に想像できるはずもない。
そして、葛藤もあったと思う。
赤ちゃんに罪はないからこそ、育てるのか中絶するのかは苦渋の決断になる。