ただ、この夜から抜け出したくて。
「ちひろ、今日も何も話してくれないの。でも篤見さんが来てくれたことは、伝えるわね」
そう言って家に入ると、
「篤見さん来てくれてるわよ。顔出したらどう?」
と大きな声が聞こえてきた。
返事はない。
僕がやらかした、事の大きさがよく分かる。
「ダメかも。まだ出てこないみたい」
「大丈夫です、また来ますから。そろそろ話ができたら良いんですけど…。本当に嫌われちゃいました」
「篤見さんは何も悪くないとは言ってるんですけど、黙ってたことが許せないってすぐ怒るんです」
「許せなくて当たり前です。そうだ。ちひろさん、退院してから病院行きました?妊娠に関しての話とかは…」
「まだ受け入れられないって、どこにも行ってないんです」