ただ、この夜から抜け出したくて。
酔ってもないのにデレデレと嬉しそうに、班長が僕の肩を組んできた。
「今日は家まで送るんで、飲みたいだけ飲んでください」
「それ、俺が篤見に言うセリフ。奢ってもらうやつが言うな」
班長が選んでくれたお店は、至近距離でもお互いの会話が聴こえないほど、騒がしい居酒屋。
仕事終わりにストレスの捌け口として、お酒を選ぶ人は多いみたいだ。
「最近上手くいってるか?」
「…え?何がいってる?」
「例の女の子!順調か?」
何でもハキハキ言う、班長の声さえも聞こえない。
ここに居るお客さんが、みんな喧嘩を売ってるように見える。