アキアカネとあおいそら
天を送り届けて自宅に帰宅した葵は、静がいるのをわかってて避けられる自室ではなく、リビングへ向かう。
「おう、帰ったんか。おかえり」
「……ただいま」
ソファに座りスマホを見ていた静に先に声をかけられ葵はバツが悪そうに返事をする。そんな葵に静はどこか嬉しそうにしていた。
「天ちゃん無事に送れたんか?」
「うん……」
静の言葉に素直に頷く葵に静は意外そうな顔をする。そんな静に葵は居心地悪そうに視線を逸らした。
「兄貴……ごめん」
葵の口からようやく出た謝罪の言葉。今までの態度、勝手に抱えた劣等感、嫉妬。それをぶつけてた愚かな自分。全てを含めて、真摯に謝る。だが静はその言葉が気に入らなかったようだ。低い声で返す。
「何に対して謝っとるんや?」
「それは……」
「まあええわ。俺はな、おまえがどんな態度やろうが信念持ってやっとることなら応援してんねん。いつだってな。せやから、ちゃんと掴んどけや」
静はソファから立ち上がると、未だリビングの扉の前から動けないでいた葵に近づき、その頭をわしゃわしゃと撫でる。
「わかったか、こんアホ」
その顔はニヤっと笑っていて、どこか嬉しそうだ。
「うん」
葵のまっすぐな言葉に静は満足そうに笑い、ソファに座り直してまた口を開く。
「天ちゃん、ええ子やな」
「うん。優しくて、かわええ子やで」
「あんなええ子逃したらあかんで?」
静に葵は挑発的な笑みを浮かべる。
「誰にも渡さへん」
「お、言うやないか」
「赤音さんは誰にも譲らん。兄貴でもな」
その言葉に静は一瞬目を大きく開くがすぐにいつもの優しい顔で葵を見て微笑んだ。
「上等や」
兄として弟の成長を嬉しく思う反面、どこか寂しくも感じる。しかし、弟の幸せが一番だと静は思うのだった。
そして、2人は笑いあったのだった。